15年使ったBecky!からThunderbird 3へ

Becky! Internet Mailを初めて使ったのは1996年秋のこと。1995年末にOS/2 WarpからWindows95中心の利用へと移行した当時、初めて利用したのはWinbiff今年の3月末でサポート終了となったのですね…)というメーラーでした。次にEudoraに移行し、半年ほど使ったのですが、当時の知人からもっと使いやすいメーラーがあるよ、ということで勧められて使ってみたのが、リリースされて間もないBecky! Ver.1でした。気に入ってすぐにレジストし、以来、現在まで足掛け15年、Becky!だけを使い続けてきました。
Becky!はまず基本的な動作が軽い上に、メーリングリスト管理機能だとか、振り分けたいメールを選んだ状態で振り分け項目を選ぶと、そのメールから自動的に項目がインポートされて入力されるフィルタ作成機能とかといった日本のユーザーにフィットする機能を多く備えているのが特徴で、旧来からのPOP3がメインの日本のISPで利用する分においての機能の充実ぶりは、今なお他の追随を許さないほどです。その一方でさすがにVer.2になってからも10年ということで、基本設計の古さが目立ってきています。例えばIDLEコマンドの不在を含めてIMAP4への対応が今ひとつの上に、国際化対応についても遅れ気味で、日本語と1バイト文字以外のUnicode名のIMAP4フォルダが文字化けします。アドレス帳等も各種形式とのインポート・エクスポートは可能なものの、基本的にはBecky!だけの閉じた仕様で他とは連携しません。
そんなわけで結局、2月にIMAP IDLEのテスト用のつもりでインストールしたMozilla Thunderbird(以下TB)3に乗り換えることになったわけですが、TB3の第一印象は、実はあまり良いものではありませんでした。決して動作が極端に重いわけではないのですが、全般的な軽快さはやはりBecky!には劣る気がしますし(ただしメールの受信スピードは速い気がする)、各アカウントの受信トレイや下書き、送信済み、迷惑メールなどを束ねた、あの「スマートフォルダ」が今ひとつしっくりこなかった上に、細かいことですがメールの表示順序のデフォルトが送信日時の昇順(Becky!は降順)なのも気に入りませんでした。フィルタもBecky!と比べて作りにくいですし。しかし、多言語対応が完璧に近いのと、IMAP4関連のサポートがIDLE対応をはじめとしてしっかりしていることは、そうした使いづらさと乗り換えの苦労をも甘受させてしまうほど、自分にとって重要に思えます。
決定的な動機となったのはTB3ならではの高機能アドオン、中でもカレンダーアプリ「Lightning」と、同アプリにGoogleカレンダーとの同期機能を提供する「Provider for Google Calendar」、そしてアドレス帳のGmail連絡先との同期を行う「Google Contacts」の3つのアドオンの存在を知ったことでした。これらのアドオンでGoogleカレンダーや連絡先と連携させておけば、Google Syncを経由して端末の予定表や連絡先とも同期するわけですからね。
実はここ数日エントリできなかったのは、自宅のメインマシンのメールデータ移行と環境設定に3日間ほど要したためです。15年分、数万通のメール(実はその間に大きなHDD事故を2回やっていて、半分ぐらいのメールを消失してしまっているのですが、それでもかなりの量)をBecky!からエクスポートしてTB3にインポートする作業、そしてTB3側でインポート完了後に「グローバル検索」機能のための「索引」を付ける作業時間の長さ。あとフィルタの移行もしんどかったです。メールはインポートできてもフィルタは無理ですから手作業で作り直しですし、数もかなりありますから。
ともあれ、移行作業はなんとか終了し、数日使ううちに「スマートフォルダ」にも慣れてきました。移行作業や同期機能についてはいろいろネタになる内容もありますので、いずれ別途エントリしたいと思います。
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ところで、2009年2月時点での国内でのメーラーのシェアについての記事を見つけたのですが、1年ちょっと前にはもうBecky!とTBのシェアはほぼ拮抗していたということで、現在はTB3の国内シェアがBecky!を上回っているかもしれません。当時はTBのバージョンはまだ2でしたし。20代以下の若年層にはTBが浸透していて、Becky!は30代以上でシェアが高い、というのは長く使っているユーザーが多いからだと思いますが、たとえTBに抜かれてもBecky!のシェアは日本製メーラーとしては間違いなくダントツでしょう。メールやブラウジングといった基本的なインターネットのアプリケーションのうち、広く普及しているプログラムで国産のものは、ひょっとしたらBecky!が最後になってしまうのかもしれません。それだけに、個人的には引き続き応援して行きたいところなのですが。
IMAP4でのIDLEコマンド追加やアーカイブ機能の改善、Unicodeフォルダ名の文字化け解消、アドレス帳のGmail連絡先との連携対応(プラグインでもいいです)が実現されれば、再びBecky!に戻るかもしれません。一応、乗り換え直前までのBecky!のメールデータは削除せずに保存済みですし、既定のメールプログラムとしての設定と起動時の自動送受信だけを無効にした状態で、いつでも戻れるようにはしてありますので。要は未練たっぷり。