テヘ

先にエントリした「自由新聞」で「町」→「洞」改称関連の記事を調べていて、下のような広告を発見。1946年10月4日付。

たぶん、これが韓国の代表的なお菓子のメーカーのひとつ・ヘテ製菓(해태제과、当時は鮮美製菓)で最古の広告です。
商品は1960年代後半までヘテの代名詞だったキャラメルで、コピーは「ヘテ・キャラメルは/運動の時・勉強の時・遠足*1に行く時/気分を爽快にする/栄養菓子」。キャラメルの箱には「해태(ヘテ)」の文字が右から書かれているので、一瞬「テヘ」(笑)と読めてしまうところが妙です。
韓国のお菓子といえば韓国ロッテを思い浮かべる人が多いのでしょうが、かつてロッテを上回る絶大なブランド力を誇っていたのがヘテです。「ヘテ」とは善悪を見分けることができるという想像上の動物で、国会議事堂をはじめソウル市内のあちこちに「ヘテ像」が建立されています。本来は「해치(ヘチ、獬豸)」が正しいようですが、いつしか訛って해태となったようです。
創業は1945年10月で、日本時代にあった「永岡製菓」の韓国人従業員が同社の龍山区南営洞(現ヘテ本社の所在地)にあった工場を引き継ぎ、羊羹(現在も生産中)やウェハースなどの製造を始めたのが最初だそうです。チューインガムやチョコレートも同社が韓国で初めて手掛け、後に清涼飲料、乳業や冷凍食品などへの拡張を経て、ひと頃は流通(小売)業や電子機器などの畑違いな分野にまで進出して中堅財閥(ヘテ・グループ)化。かつて長年韓国最強を誇ったプロ野球球団「ヘテ・タイガース(現KIAタイガース、本拠地・光州)」は、その名を耳にしたことがある人も少なくないことでしょう。しかし、こうした無謀な拡張が徒となり、1997年のアジア通貨危機の影響で倒産。グループの解体、欧州系ファンドなどによる支援を経て、最終的には業界順位がヘテより低かった「クラウン製菓」の子会社となり、現在に至っています。

*1:この単語は現在の韓国では使われません。소풍[逍風]と言います