ヘテ煉羊羹(연양갱)

その昔、「MIDIクモンカゲ」(消滅)が韓国からの大量のページビューを集めていた頃、なんとヘテ製菓の広報部の方からメールをいただいたことがあります。
「どうしてウチの商品のMIDIがないんですか?」
確かにロッテガム(尹享柱バージョン)とかアイスクリーム(1分バージョン)とかオリオンチョコパイ(李龍バージョン)とかがあるのに、「ヘテ」と名の付くものは牛乳(今は日本のコンビニでも売っている「両班海苔」で有名な東遠グループに吸収され、ヘテ牛乳自体が消滅してしまいましたが…)ぐらいしかなくて。とりあえずヘテのコマソンで代表的と思われるブラボーコーンとかババムバー(李銀河バージョン)とかをCakewalk Professionalで打ち込み始めたのですが、某サウンドカードの商品化作業で台湾に半ば駐在状態という、多忙を極めていた頃だったのでそのまま放置プレイとなった後、HDDクラッシュで作りかけのデータを消失してしまい、ヘテさん直々のリクエストには応えられず仕舞いでした。いつかMIDIクモンカゲを復活させることがあるなら、"해태, 해태, 신용있는 상표/해태, 해태, 정다운 상표...♪" という1960年代のヘテキャラメルの歌を打ち込んでみたいものです。
そんなヘテで1945年の創業時から続く最古の商品ながら、つい数年前までCMの1本すら流したことがなかったというのが「煉羊羹」です。鉄道駅やバスターミナルの売店、クモンカゲ、コンビニでは昔から定番ですし、ネットで拾った60年代末のものと思われるヘテギフトセットのCM動画にも縦書き漢字表記パッケージの煉羊羹が映っていますが、確かに単体のCMをラジオやテレビで見聞きした記憶はなかったです。それが近年になって、突如テレビCMで「煉羊羹age」が図られるようになりました。商品のPRに加え、20世紀末からの韓国のレトロブームに乗って、ヘテという企業とブランドの歴史の古さをアピールする目的があるものと思います。
この煉羊羹もひと頃「国語醇化運動」の洗礼を浴びたようで、1959年12月13日の新聞広告では「『ヤンゲン(羊羹)』という倭語(日本語)名を一掃」し「甘母(감모)」と改称した旨が告げられています(ちなみにこの広告でのヘテ像はパッケージでは左向き、左上のマークは右向きですね)。


しかし前述のように遅くとも60年代末には「煉羊羹」に戻っていますので、「甘母」という新造語はどうやら定着せず、短命に終わったようです。ただ1959年12月というとまだソウルにはCM放送を行う民放ラジオ局がなく、テレビは一般家庭にはほとんど普及していない上、ラジオ・テレビを通じて韓国初のCMを放送した1956年開局のHLKZ-TVが2月の火災により自前で放送できなくなり(米軍局AFKNを借りて1日30分のみ、CMは中止)、ソウルからCMが消えた時期だったので、せめてラジオCMでも打てていればもう少し認知度が上がり、ひょっとしたら今頃は韓国語で羊羹は「カムモ」といっていたのかもしれません。
ちなみに最近の煉羊羹のパッケージでは商品名がハングル表記になっていますが、昔と同じなら、裏は漢字のはずです。あ、味は普通に羊羹ですよ。
【更新 20:45】 「甘母」の広告イメージを追加しました。