Eスポ

昨日、5月31日は久々にEスポ(VHF帯のスポラディックE電離層反射伝搬)で中国やロシア、韓国といった海外のFM放送が聴けました。
もちろんEスポは毎年初夏から真夏にかけ、繰り返し発生しているのですが、自分がこれに遭遇したのが久々、というわけです。社会人になってからは一度もEスポ受信などしたことがない気がするので、たぶん20年ぶりぐらいです。


昔、BCL(海外放送の聴取)というのにハマっていたことがあります。というか、小学校の高学年から高校に上がった頃までは、メインの趣味でした。小学校4年の夏休み中にラジカセで韓国の中波を聞いたのがそもそものきっかけで、翌年、当時爆発的なBCLブームの中で大ヒットしていたソニーのBCL用短波ラジオICF-5900(商品名「スカイセンサー5900」)というのを買ってもらってから、本格的に始めました。
以来、当時のBCL雑誌「短波」に韓国中波などの受信レポートを送ってたまに掲載されたりとか、名古屋で行われた全国的なBCLの集いにお声をかけていただき、最年少で参加させていただいたりとかしたのですが、高2ぐらいで他のものに興味を持ったこともあって、フェイドアウトしてしまいました。しかし、その後も常に何らかのBCLラジオは所有していて、たまに思い出したように短波帯や中波帯をワッチ(watchの音訳、無線関連特有の表記)しています。
今は1999年の台湾出張中に現地のDaiichi*1で買った、Sangean ATS-606A*2という10キー選局の小型短波ラジオを愛用しています。


で、昨日の昼過ぎ、なんとなく思い立って前述のATS-606A(FMは海外仕様なので87.5〜108MHz)の電源を入れると、87.9MHzあたりで中国語が。ほかにもNHK東京アナログテレビの1と3チャンネルの映像/音声で使われている周波数*3を除いた、数多くの周波数で中国語が聞こえていました。
ほとんどは中国語局(おそらくは台湾ではなく大陸の局)だったのですが、88.3MHzと88.7MHzではロシア語局(たぶんウラジオストクなどの極東ロシアの局)も受信できました。しかも、このロシア語局といくつかの中国局は、ステレオでも数分間安定して受信できるほどの強度で入感していました。
それと、89.1MHzの韓国KBS Cool FM(第2FM)を日本に居ながら初めて聴けて、ちょっと感激です。この89.1MHzは1970年代末から80年代初めにかけての「短波」誌などでEスポの常連局として有名だったTBC(東洋放送)-FMの後身で、さらにその前身は韓国初のFMラジオ局だった1965年開局の「ソウルFM放送」です。つまり、韓国で初めてFM放送に使われた由緒ある周波数なわけですが、70年代末当時は広島県在住で、Eスポの到達範囲としては韓国は近すぎることもあって、個人的には幻のFM局でした。当時広島県でよく聞こえたのは中国(FMラジオはまだ局数が少なく、当時は中国のVHFといえばテレビ音声)と沖縄(FEN=当時=やNHK。85年に前年AMから転換したFM沖縄を帰省中にたまたま受信したことも)でしたので… ちなみに昨日、韓国局で確認できたのは89.1だけでした。


インターネットの普及と広帯域化、ストリーミング技術の進歩のおかげで、今や海外のラジオはおろか、テレビさえも安定して見られるようになりました。
数秒から数分間、長くても数十分という短時間しか受信できないEスポ伝搬では、番組そのものを楽しむのは不可能なのですが、普段は数十〜数百kmの範囲にしか届かないFMラジオ電波が、数千kmもの遠方から届いてくるのはロマンのある話だと思います。

*1:デオデオの社名が「ダイイチ」だった頃に台湾に現地企業との合弁で出店。今は合弁相手が変わってベスト電器に。

*2:台湾のラジオ専業メーカー「山進電子」製。同社はなんか短波ラジオから撤退するとの噂もあるそうですね。今やこの分野でも「DEGEN」のような中国製が強いからなのか…

*3:時折海外電波のほうが強くなり、地元局でも送信地から離れた場所ではチャンネルが乗っ取られてしまうことも。BCLでない人からは、そうした「受信障害」の原因として忌み嫌われるわけですが。