【長文御免】チラ裏: Xperia断想(シリーズ最終回)

それにしても、Xperiaiモードメールについて何か書くたびに、このままXperiaiモードメール未対応で発売されたところで果たしてどれだけ売れるのだろう? と、常々疑問に思ってしまいます。はっきり言って、個人的には大いに懐疑的です。
現行の「ドコモ スマートフォン(今月から総合カタログの機種ラインナップ一覧表にそういう括りが出現しています。Xperiaの正式な商品名も「ドコモ スマートフォン Xperia(tm)」ですし)であるT-01AHT-03AやSC-01Bが出る頃には、(もともと諦めている人が多いこともあってか)iモードメール対応を望む声などほとんど聞かれなかったのに、Xperiaだけはどこのコミュニティを見に行っても、今なお相も変わらずiモードメールやiモード(Web)対応に期待する声ばかり。正式発表からかなり経過し、ネット上はもちろん第一線の小売店にも情報が行き渡り始めたというのに、です。これまでスマフォを華麗にスルーしてきた層、中でも既存のソニエリiモード端末を使っていたり、ドコモ向け通常端末から事実上撤退して久しいはずのソニエリを今なおドコモ端末の主要供給元として認識している層が中心となって反応しているのだろうと思いますが、現実は前回エントリした通りで、カタログや店頭のPOPにはっきりとiモードには対応しておりません」と書かれていますから。
で、3月の総カタにXperiaが載り、店頭POPなどの販促物も出揃ってきましたが、現時点で配布中のA4両面刷のカタログ(「2010年1月現在」とある、先月末にドコモショップでもらってきたモノクロコピー)では、Android色というかGoogle色が意識的に排除されているように思えます。とにかく「Google」という単語が一見しただけでは見当たらず、裏の最小サイズ文字の商標クレジットに辛うじてその名を見つけることができたのみです(ちなみに、ネットに繋ぐのに必須の「mopera U」は存在すらせず。本当にドコモはmopera Uに関するPRが圧倒的に不足していますね)。Gmailはおろか、キラーアプリのひとつのはずの「Googleマップ」に関する言及すらありません。Googleのサービスで触れられているのはYouTubePicasaだけですが、PicasaはほかのGoogleのサービスと比べると知名度的にややマイナーな気がしますし、YouTubeGoogleのものだと認識している人も意外と多くないのでは。もはやGoogle隠し」と呼んでもいいレベルの徹底ぶりです。販促物として目下最新の総カタの方では、「Googleサービスをさらに快適に楽しめる」という見出しが付き、Googleの顔が少しだけ覗けるようになった感じですが、やはりGoogleマップは出てこず、あくまで「Mediascape」「Timescape」といった独自拡張の紹介が中心です。
こうしてAndroid端末であることを可能な限り伏せた上、ドコモのラインナップの中ではなんだかオタクっぽいイメージもなくはない、劇団ひとりがイメージキャラクターの「PRO」シリーズ(このカテゴリ分けも破綻しつつあるような。Xperiaがなくて、昔なら「90xiTV」型番で出ていそうなSH-07Aと、BlackBerry BoldやSC-01Bが同じ括りというのもおかしな話ですし、F-04BがPRIMEなのが最大の謎。やはり隔離シリーズなのか?)からもあえて外したのは、ドコモ自身のものを含む既存のスマフォと差別化した上で、いかにもソニーらしい「新感覚エンタテインメントマシン」というコピーの下、これまたソニーっぽい響きを帯びた「Xperia」というブランドをひたすら強調し、近未来的なコミュニケーションツール+メディアプレイヤー端末としての新しさ、ユニークさを訴えようという戦略なのでしょうか。
全体的には、発売直後のiPhoneに飛びついたようなアーリーアダプター層に訴求しようとしているのでしょうが、懸念されるのはiPod/iTMSのような地均しがない上、ドコモのアイデンティティたるiモードすら不在であること。それでいて同じAndroid端末のHT-03Aを含む既存のスマフォのイメージ踏襲も意図的かつ徹底的に避けているわけですから、ターゲットゾーンを絞りすぎのように思えてなりません。この状態でヒットしたら、ソニエリ、というより「やっぱソニーってすげー」ということになるのでしょうが…
ここでiPhoneの例を振り返ってみると、当初メールが新規のi.softbank.jpドメインで、PCメール受信拒否設定のケータイ相手にはメールが届かない状態だったにもかかわらず、iPhoneが成功できたのは前述のAppleによる地均しに加えて「キャリアがソフトバンクだったから」これが結構大きかったと思います。要は「SBMから出るiPhone」だったおかげで、メールへの期待が軽くて助かったのではないかと。これが、もしドコモだったらどうなっていたことでしょう。今のXperiaと同様、否、それ以上にiモードメール対応を求められ、期待されたのではないでしょうか?
しかし、2010年初頭現在でも果たせていないスマフォでのiモードメール対応が、2008年7月のiPhone 3G発売のタイミングで実現できていたとは、とても思えません。きっと既存のmopera Umopera Uメールを使うことになっていたのでしょうし、まるでmopera Uプッシュメールを踏襲したかのようなi.softbank.jpの仕様からも、そんな予定があったことが窺えるわけですが(深読みしすぎ?)、はたしてmopera U仕様のiPhoneSBMほどの成功を収めることができたでしょうか(まあ、それでもある程度は売れたでしょうし、mopera Uユーザーにとっては、サーバーが徹底的に増強されて長年のメール遅延から解放されていたり、auSBMでのホワイトリスト登載が実現していたりして、非常に喜ばしい状況になっていたのかもしれませんが)。
そもそもユーザーの求めるもの、期待するものからして、対ドコモと対SBMとでは大きな差異があるわけで、ドコモを選ぶユーザーの多くは、信頼性とサービスを非常に高い水準で期待している印象がありますし、そんな期待にドコモもまた、実際にある程度応えてきていると思います。それがiモードiモードメールへの忠誠度の高さにも表れているといえるでしょう。一方、「Yahoo! ケータイ」や「S!メール」でなければダメ、という人は一部の例外的なスマフォユーザー以外、ほとんどいないのでは。Yahoo! ケータイというブランドやサービスに対する忠誠度は、iモードやひょっとするとEZwebと比べても、かなり低いのではと思います。端から見る分には何かのきっかけですぐに転びそうな潜在的流動層、移り気なライトユーザー層を大量に抱えていて、いかにもMNPの草刈り場になりやすそうなのがSBMです。
しかし、新規契約やMNP純増数における現実は真逆だったりするのが、また面白いです。iPhoneのヒットに限らず、SBMが失敗も危ぶまれたボーダフォンKKの買収以降、新規やMNPで順調に伸びてこれた理由のひとつに、SBMならではの「軽さ」があると思います。この「軽さ」は悪い意味では決してなく、月額料金や購入時の初期負担の軽さとか、臨機応変に改訂される販促政策にみられるようなフットワークの軽さとか、ボーダKKの遺した3Gインフラが国際標準だったおかげで海外端末を最小限の手直しだけで展開できる、キャリア側の導入負担の軽さとかです。先のYahoo! ケータイの例のようなキャリアやサービスへの忠誠度の軽さとかも含まれますけどね。とにかく、iモードのような強力なサービスブランドを持たず、唯一の武器が「ホワイトプラン」で、キャリアの全体的なイメージも文字通り「ホワイト」な状態だったことは、SBMというキャリア全体をiPhone色に染め上げながらiPhoneを展開して行く上で、逆に好都合だったと思います。
旧国営の流れを汲み、重厚長大な印象の強いドコモは、そんな「軽さ」とは全くの無縁に思えます。だからこそ、スマフォでのiモードメール対応も含めて、常に完璧に近い水準の端末やサービスをユーザーから期待される運命にあるのだと思うのですが、残念ながらこれまでのドコモのスマートフォンについては、そうしたユーザーの期待に必ずしも応えてきたとは言い難い部分があり、それがドコモのスマフォが市場での存在感を今ひとつ発揮できていない状況につながっていると思います。
ともあれ、iモードメールなしのXperiaでは、結果的に2台目需要を狙って行かざるをえないでしょう。しかし、Xperiaに限らず今までもそうでしたが、パケット定額の上限額が高く、ホワイトプランやガンガントークのような音声におけるキラーメニューもないドコモのスマフォが、iPhoneのように2台目需要を狙えるとはとても思えません。発売まで多少時間がかかってでも、メインあるいは唯1台のケータイとして訴求できるような仕様で出してほしかったところです。あるいはひょっとして、iPhoneなどとの競争が可能な端末価格や料金プラン設定(特にパケット定額上限の引き下げ)へと向かうのかもしれませんが、個人的には今の料金体系を維持したままでもiモードメールにネイティブ対応してもらったほうが嬉しいですし、ドコモユーザー、特にドコモを使っている期間が長い人ほど、望むのはそっちのような気がするのですが。
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と、Xperiaの国内正式発表以来、何度かXperiaiモードメールを絡めて何度か書いてきましたが、このテーマで長文を書くのは、今回を最後にしたいと思います。
随分辛辣なことも書きましたが、基本的なスタンスは一貫してXperia応援、「ドコモ スマートフォン」がんばれ! のつもりです。
ウィルコムが牽引したWindows MobileSBMの屋台骨にまで成長したiPhoneに続き、日本でのAndroidの成功と普及の鍵を握るのはここまで先行してきたドコモだと思いますし、他OSの端末も含め、国内最大のキャリアが扱うスマートフォンが本格的に売れるようになってこそ、auイー・モバイルをも含めた健全な競争が生まれ、国内のスマフォ市場の成長と発展に繋がるでしょうから。そして、Xperiaという端末もまた、ドコモのスマフォが市場定着を果たす契機となりうるに相応しい商品力、ユーザーへの訴求力を備え、ボリュームゾーンをも狙えるポテンシャルを秘めた端末だと思います。