ガラケー

年の瀬が迫ると話題になる「流行語大賞」ですが、もしもケータイの世界にも流行語大賞があるなら、今年は「アイフォーン(”フォ”にアクセント)」と「ガラパゴスケータイ」が大賞を争うことになったのではないかと思います。
ガラパゴス化」という用語が業界内で使われるようになったのは、SIMカードやチップローミングSIMロック/フリーといったGSM圏由来の概念が日本でも理解されるようになった数年前からだと思うのですが、業界の外にまで拡がったのは、iPhone 3Gの登場により日本のケータイ市場の世界からの乖離(=ガラパゴス化)を多くの消費者が認識するに至ったからだと思います。
ガラパゴスケータイ」ないしは略して「ガラケー」は否定的なニュアンスで使われることが多いですが、進化の方向性が世界の趨勢とは違うのだ、という現状と実態を言い表すには、この上ない表現だと思います。


このblogで「ガラケー」などというタイトルでエントリすると、批判一色の内容を思い浮かべる人のほうがたぶん多いのでしょうが、ガラケー、個人的には決して嫌いではないですよ。ガジェット、デバイスとしての面白さはガラケースマートフォンも変わらないと思います。
中でも新しい型番ルールとシリーズ分けが導入されたドコモの秋冬モデルのハイエンド機は、結構魅力的に思えます。縦開きと横開きでキーの向きが変わる、P-01Aの「2Wayキー」なんて、よく思いついたなぁと感心させられます。国内メーカー製のハイエンド全機種にBluetoothが載ったというのも、画期的です。本当にどれにしようか真剣に迷ってしまうほどの、充実したラインナップだと思います。
おサイフケータイFOMAにも導入されて間もない頃、FeliCa搭載端末に機種変更して数ヶ月の間、当時の事務所の近所にあったam/pmマクドナルドでEdyを使いまくり、その便利さを実感したものです(とくにa/pは事務所の敷地内にセブン-イレブンがあったにもかかわらず、Edyを使うためにわざわざ向かいのビルまで出向いていたことも)。モバイルSuicaが登場した頃は、もうメインで使う端末は非ガラケーになっていましたが、戻ろうかどうか真剣に迷ったほどです。
ワンセグも羨ましいですね(ちなみに自分はワンセグの視聴できるハードウェアをケータイ以外も含め、実は1つも持っていません…)。
パーソナライゼーションと位置情報、プッシュ配信が融合した「iコンシェル」みたいなエージェントサービスも自分にとって必要かどうかはさておき、技術やビジネスモデルの面では非常に面白いと思うのですが、これぞキャリアがサービスやコンテンツの企画・開発から配信まで全面掌握可能な、ガラケーならではの究極のサービスだと思います(というか、こればっかりはキャリアにきっちり&がっちり管理してもらわないと、迷惑千万な代物に陥ってしまう可能性が高いです。勝手サイトならぬ勝手エージェントが登場して、繁華街に出かけるたびに数十〜数百通もの電子クーポンとか電子チラシを無差別に送りつけられてきたら困りますし)。
さすがに、「着うた」類に代表されるDRMガチガチの音楽/映像配信とかにはまったく心惹かれませんが、「先行配信」とか「限定配信」ものが必要な人は、そういったガラケー用配信サイトから落としてくるしかない現状があります。


一方でガラケー機能としては古典的な部類に入る「2次元バーコードリーダー」。スマフォ上のアプリとしては、台湾発の「QuickMark」が以前からありましたが、肝心のカメラがパンフォーカスだったり、マクロ機構があってもあまり近寄れなかったりで、名刺の隅っこにあるような小さなQRコードはほとんど読み取れませんでした。これがHTC DiamondのAFカメラでは、やっと! ガラケー並みに読み取れるようになったので、ファストフード店や雑誌広告等でQRを見つけるたびにDiamondでQuickMarkを起動し、手当たり次第にQR読み取りを試している自分がいます。初めてQR読み取り機能付きの端末(自分はFOMA N900i、2004年2月でした)を手にした時と同じです。
HTCをはじめとする海外スマフォベンダーが続々と日本に根を下ろしつつあることで、ようやくスマフォのスペックもガラケーに追いつくところまで底上げが図られてきつつあるのは、よい傾向だと思います。


そんなこんなで液晶やカメラがどうにかガラケーレベルに達しつつあるスマフォですが、比較優位ではまだまだガラケーが選ばれざるをえない状況です。
最強のエリアカバー率と速度を誇るD社の電波をスマフォ用の定額アクセスポイントで使うのに、無線LANはおろかBluetoothでさえも我慢しなければならないのは、非常に残念です。それがガラケーであれば、ハイエンド全機種に標準装備となったBTで、A2DPヘッドセットまでも使わせてもらえます。
フルブラウジングにせよFlash、ストリーミングにせよ、スマフォで扱えるコンテンツはガラケーでもほぼ可能になっていて、しかもガラケーのほうがバージョンの新しさや質、手軽さで上回っている場合も少なくありません。ようつべ、ニコ動にせよGoogle Mapsにせよ、敷居が低いのはガラケーのほうです。
とりわけD社においては、両者の隔絶もひどいです。メールひとつとっても、ガラケー用とスマフォ用ではドメイン名もサービス内容も異なり、しかもそれぞれが着信通知機能を除いて連携しておらず、唯一の連携といえる通知も片方向だけ(スマフォメアド→ガラケーメアドのみで、逆は不可)という体たらくです。守りたいものがいろいろあるのはわかりますが、不当に高い障壁が作られてしまっています。


目下ガラケーの誇る2大機能、おサイフケータイワンセグのうち、サポートしない理由がハード面の事情だけだった後者は、国産スマフォでは対応機種が増えてきました。すでに海外製であっても通常端末には載っているので、来年にはスマフォでも対応してくるかもしれません。しかし、未だに通常端末でさえ海外メーカーが参入できないでいる前者については、来年も難しそうな気がします。最初から諦めてかかったほうがいいでしょう。


結局、おサイフの壁が来年も崩されず、最大手D社によるスマフォにおけるキャリアメールの扱いや定額AP使用中のBT/無線LANの規制が継続される限り、来年もガラケーの地位は安泰だと思います。
「スマフォならSBM」という現状も変わらないでしょう。秋冬モデルの発表ではSBMのスマフォの充実度が際立っていて、iPhone 3Gとともに高ARPUが見込める機種としてXシリーズ(含Nokiaブランド)に期待をかけているのも確かでしょう。
しかし、そのSBMとて、全面的に脱ガラケーを図ろうとしているようには思えません。主力は相変わらずシャープ端末です。中途半端にガラケー化されたOMNIAも、残念ながら苦戦しそうな気がします。
X04HTを含むXシリーズが、小型のソフトバンクショップや併売店、非家電系量販店の併売売場ではほとんど取り寄せ扱いなのも相変わらずです。現場にとっては扱いにくい、売りにくい商品とみられているようですが、今後もそうであり続けるのでしょうか。